第四百八十七話_short マスクの理由 [horror(戦慄)]
今年はインフルエンザが大流行してマスクをかけている人を多く見かけた。マスクはインフルエンザにかからないようにするためではなく、インフルエンザにかかった人間が、咳やくしゃみで唾液を飛ばして菌をまきちらさないようにするために必要なものであるという話を聞いたことがあるのだが、果たして皆がそのように理解して使っているのかどうかは怪しいものだ。
二月に入ってぼつぼつとマスク着用の姿が減ってきているという時になって、同僚の阿隈君がマスクをつけて出勤してきた。しかも白ではなく黒っぽいマスクで真ん中に十字のマークがついている。最近はそんなデザインのマスクもあるようだ。
彼は明るく快活なキャラクターなのに、心なしかマスクの下は辛そうに見えた。
「あら? 今になってインフルエンザ?」
通りがかりに訊ねると阿隈君が振り返って言った。
「うーん……インフルエンザじゃないんだけど……」
「うん? じゃぁ、予防とか?」
「そうだね、最近ちょっとエライものを背負い込んでしまって……実は僕の中に棲みついた悪魔をまきちらさないようにしてるんだよ」
了
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