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ハロウィンの夜。 [horror(戦慄)]
一年にたった一度のハロウィン。
みんなが待ちに待ったこの日。
街は怖ろしい姿をした連中があふれ、
血に飢えた怪物や気味の悪い妖怪たちが大手を振って大通りを闊歩している。
「おお!嬉しい!今夜は存分に楽しめるぞ!」
吸血鬼が叫ぶ。
「グァオ。オレ、暴れたい!」
フランケンも雄叫びをあげる。
「ゔー、おうおう」
ゾンビも何かを言いたそうだ。
怪物たちで溢れた通りの真ん中で、魔女が2人。
片方がいささか怯えた声をあげた。
「ね、ねえ、この人たちの扮装、すごいね。リアルすぎ…」
「ほ、ほんと。なんか怖いくらい」
その声を聞きつけた狼男がクンクン匂いを嗅いで吠えた。
「ここに人間が紛れ込んでるぞ!」
「人間?オレにくれ〜!」「脳みそくれー」「血を飲ませろ〜」
異世界との境界が曖昧になる、年に一度のハロウィンの夜。
ポアゾン [ordinary day(日常)]
し、しまった。
俺はおののいた。
朝から身体がおかしいのだ。頭はズキズキするし、腹具合も悪い。だるくて立ち上がることも億劫だ。
昨夜の集会で毒を飲まされたのだと気がついた。まさか、あれが毒だったなんて。どうせきしゃから勧められるままに大量に飲んでしまった。毒だなんてまったく思わずに。
く、苦しい。なんてことをしてしまったのだ。もう、毒は身体中に回ってしまっているだろう。
そ、そうだ。上司に連絡しなければ。
毒を飲まされたので、仕事休みます・・・
し、信じてもらえるかな・・・。
それにしてもあの毒は・・・大きな瓶になんか名前が書いていたな、確か・・・純米・・・旨かったなぁ・・・。
鏡のようなカウンセラー。 [allegory(寓意)]
優れた心理カウンセラーは、相談者=クライエントの話を文字通りに受け入れるのみならず、クライエントの立場に立ち、まるでクライエントになりきって、その感情を理解するという。
彼女が自分の物語を話し終えるまで、カウンセラーは静かにうなずいたり軽い相槌を返しながら聞き続けた。
彼女が辛そうな表情で語ると「辛かったんですね」、泣き出しそうな話の時には「寂しかったんですね」などと、感情への応答を挟むこともあった。とても優れたカウンセラーとして自他ともに認められている彼は、本当にクライエント自身になりきって耳を傾ける能力に長けていたのだ。
一時間ほどして彼女の話が終わった。
「先生、ありがとうございました。お話を聞いていただいて、とても気持ちがすっきりしましたわ」
そう告げながら女性らしい仕草で静かに立ち上がった白衣の男は、晴れやかな笑顔を残して”自分の部屋”を出て行った。
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