第六百一話_short 甘えん坊 [ordinary day(日常)]
パパ! パパ、パパー!
玄関扉が音を立てると二人の兄弟はどこにいても飛んで行ってお出迎えをする。扉を開けるなりソラとウミ、二人の兄弟が待ち構えているのを見つけてパパは嬉しそうに「お前たち、賢くしてたかい?」などと言いながら二人の頭を撫でてやるのがもう日課になっている。パパが靴を脱ぐ間も二人はパパの足元にじゃれつき続け、リビングに向かうパパの後に従うのだ。
そんな様子をリビングのソファーの上で眠ったふりをしながら薄目で冷ややかに眺めているのは、少し年上のダイチだ。
ふん、なんだってんだ。そういうのはボクの役割だったのに。
二人の兄弟がまだいなかった頃、ダイチはパパが玄関ノブに手をかける前から気配に気がついて玄関先まで飛んで行ったものだ。扉を開けるといきなりダイチがいるのを見つけたパパは、それは嬉しそうにダイチを褒めてくれた。
だいたいそういうのはお前たち兄弟の性質とは違うんじゃあない? お前らときたら、パパが帰ろうがママが呼ぼうが知らん顔して高みの見物しているっていうキャラクターじゃん。
口には出さないが心の中でダイチはそう思う。
尻尾を振ってパパをお出迎えするなんていうのはボクらのキャラクターなんだよ! でももしかしたら伝染るのかなぁ、性格とか行動パターンとか、一緒に住んでいると。
首を傾げながら目を瞑っているダイチの姿はむしろ猫のようで、この家では時として犬のダイチと猫の兄弟は逆転しているように見えるのだった。
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