第六百八十五話_short いとこの惑星 [news(時事ネタ)]
惑星を代表する航空宇宙科学の権威であるNASAが、千四百光年離れた銀河に、わが惑星と非常によく似た惑星を発見したと発表した。太陽からの距離も、惑星の大きさも、公転周期も、そして惑星年齢も、すべてがよく似ているという。まだ調査ははじまったばかりでありはっきりとはわからないが、地質もよく似ているだろうと推察されており、おそらく水も存在しているだろうから、我々と同じような生命体が存在している可能性はかなり高いと考えられている。NASAはこの惑星を我々の惑星のいとこだと表現した。
「すごいね」
バーのカウンターに寄りかかるようにして飲んでいた男が隣の男に言った。
「よくもまぁ、そんな遠いところの情報を得たもんだ。いったいどうやって調べたんだろうね?」
隣の男は興味なさそうに答えた。
「そりゃあ、我々の技術は案外進んでいるのさ。その惑星にはもうずいぶんと前から調査艇が送り込まれているそうだよ」
光速技術が発明されてからもうずいぶんと経つ。そのことを思えばそれくらいのことはあって当たり前だ。
「そうだよな。反対側にも同じような惑星が見つかるに違いないってうわさだけど、当然、そっちにも艇が飛んでるんだろうね」
「そりゃあそうさ。三百六十度すべての方向に、実にたくさんの調査艇が出されているよ」
「へえ!? そうなんだ? すごい」
「すごいじゃあないよ。その予算を一体誰が払っていると思ってるんだい?」
「「? 誰って?」
「なに言ってんだ。俺たち労働者の税金がそんなことに使われてんじゃあないか!」
「それはけしからん!」
夢のような天体話が思わぬ方向に進んでしまい、ふたりの男は、腹を立てているときに誰だってそうなるのだが、額についた一対の触覚を激しく動かしながら、六本ある手足の真ん中を振り上げて怒りを露わにした。
了
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