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第七百十四話_short 本当にあった怖い話 [literary(文学)]

「いいからぁ、やってみなよ」

 新入社員の垣田君は太って入るがちょっと色白でかわいい童顔の男子だ。生真面目だし新入にしては仕事の覚えがよくてなかなか優秀なのだけれども、かなりシャイなところがあるためか、周りからいじられることの多いキャラクターだ。今度の社内旅行の時の宴会で「社内男の娘コンテスト」という企画が持ち上がっていて、じゃあぜひ我が部からは垣田君をと言いだしたのは、入社二年目の真帆子だった。この女子社員は明るくて元気があって社内のムードメーカーでもあるのだが、ちょっとお調子乗りなところがあって、みんなからはあほ子と呼ばれているような娘だ。

「きっとみんなが驚くからやってみ、ね、ね」

 あほ子の調子に乗せられて皆も賛同し、うちの部下らは垣田君を輩出することに決まった。太っちょの垣田君なら皆が面白がること間違いないと口には出さないが皆が思っていたのも事実だっただろう。おっさんの女装やデブの女装ほど笑えるモノはないのだ。

 さて当日。宴会が盛り上がる裏では五人のコンテスト出場者が準備にいそしんでいた。我が部の垣田君を変身させているのは私とあほ子だ。真面目な垣田君は恥ずかしそ腕はあるものの、これも仕事のうちだと割り切ったようだ。あほ子が容易したひらひらがいっぱいのロリータファッションは、デブがきたらさぞかし面白いだろうと思えた。私は垣田君にメイクをしていたが、色白で肌艶のいい皮膚にはファンデーションもよく乗るし、垣田君はどんどんかわいくなっていった。そして似合うはずがないと思っていたロリータファッションも……。

 コンテストでは滑稽な親父女装が並ぶ中で当然ながら見事垣田君が優勝。笑う者等一人もいなかった。それほど垣田君は完璧な女に変身していたのだ。

 垣田君にこんな衣装が似合って美女に変身するなんて、私たちブス女にとってこんなに恐怖なことは無い。

 これこそ、「本当似合った怖い話」なのだ。   

トラボルタ.jpg

                      了


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