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第七百十三話_short 本当にありそうな怖い話 [horror(戦慄)]

「……助けて……」

 受話器から聞こえてくるホワイトノイズの向こうから微かな声が聞こえた。

「……た……助けて……」

 村内巡査は震える手で受話器を握りしめながら「もしもし?」と応答したが、回線が混雑しているのか、こちらの声が届かないようだった。

 なんで今日に限って自分が当直なんだろう。村内巡査は自分が置かれた状況を呪った。

 ちょうど数日前、殺された被害者から入電するという都市伝説的な噂話を聞かされたばかりだった。その被害者は、死んだ後でも犯人を捕まえて欲しいという思いからそのような電話をかけてくるのだと、いかにもありそうな情念の物語った。そもそも怖がりである村内は、いつまでもその話を忘れることができず、この日の宿直もできれば誰かと交代してもらいたいと思っていた。しかし、仕事である以上、今日誰かと交代できても、いつかは必ず順番が回ってくるのであるからと諦めてこの日の当直を引き受けたのだが、まさかその日にこんな電話が入るとは。

 時刻は丑三つ時……ちょうど深夜の二時を回ったところだった。

 恐ろしくなった村内はガチャンと受話器を置いた。するとすぐにまたジリりリリ、ジリりリリリと電話が鳴り響いた。

「、や、やめてくれ! は、犯人は必ず捕まえるから、もう電話をしてこないでくれ!」

 村内巡査はそう叫んで電話を切った。それからもう電話はかかってこなかった。

 

「……助けて……」

 真理子は、気を失いそうな痛みに耐えながら、バッグの中から携帯電話を取り出してなんとか電話をかけたが、喉を打ったのか声が出ない。やはり飲酒で自転車なんかに乗るんじゃなかった。そう思ったがもう遅い。帰路にある坂道で調子に乗ってスピードを出し過ぎたのだ。まさかこんなことで転倒するなんて。側道の溝に嵌り込んだ自転車は愚にやりと曲がっている。転がり方が良かったのか、全身打ち身による痛みで動けないが、出血するような怪我はしていないようだった。しかし誰かの助けが必要だった。携帯電話に入っていた交番に電話して助けてもらおうと思ったのだが……。

 受話器の向こうでは警官らしき男が「やめてくれー!」と叫んで相手にしてくれない。なんだというのだ、最近の警察はどうなっているのだ? そうだ、救急車だ。一一九番に電話するべきだったのだ。遠く意識の中で真理子はそう思っていた。 

交番.jpg 

                      了


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