第七百七十一話_short 猿の夜明け [literary(文学)]
人類が衰退する一方で、知能を上げた猿たちが各地で蜂起して世界を支配しようとしていた。
「お、おい、大丈夫か?」
猿の集団に追い詰められた俺たちは、街のはずれにある廃墟と化した団地の一室になんとか逃げ込んだ。相棒のトシは床に倒れ込んでいたが、その腕からは血が流れ出ていた。
「どうしたんだ、怪我したのか?」
室内に誰もいないか探索し終わった俺も床に座り込みながらトシに訊ねた。
「ああ、怪我はたいしたことない。だが、これはあいつらに噛みつかれた傷なんだ」
「噛みつかれた?」
一匹の猿に掴まれた腕を引き抜こうとしたときに、奴の牙が腕に刺さったのだという。
「だ、大丈夫か? しかし、奴らがゾンビじゃなくてよかったな」
言うとトシは無理に笑い顔を作りながら答えた。
「そうかな。奴らだってまるで映画で見たゾンビみたいなものじゃあないか」
「いやいや、噛まれたのがゾンビだったら、お前もゾンビになってしまうところだったんだぞ」
「なるほど、そうか……そうだな。ゾンビにはなりたくないよな」
猿であろうがゾンビであろうが、人類が滅びかけていることに変わりはないのだが、せめて現状の方が少しはましだと思いこもうとするために、俺たちはそんな話題で笑った。
しかし、猿に噛まれたというトシの腕は熱を持ち、みるみる悪化していった。部屋に残された冷蔵庫の中から発見しした食い物で腹ごしらえをして俺たちは短い夜うぃ過ごした。
夜明け方、俺が目を覚ますと、床に倒れていたトシは元気を取り戻したのか部屋の隅に立っていた。
猿に変身した姿で。
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